Column

今度はガンバのために

ガンバ大阪は僕が昔からあこがれていたチームで、将来はガンバに入りたいとずっと思っていた。そんなチームから誘いがあったのは高校3年の夏。「給料は払えません。契約も半年」という条件だった。でも、僕には条件は関係なかった。欲しかったのはチャンス。それを大好きなクラブがくれた。それだけで十分だった。しかし、現実は厳しかった。プロ選手として大事なことは試合に出ることだが、若く、入ったばかりの僕にはそのチャンスをものにする力があるはずもなかった。2年後、札幌へ期限付き移籍を決めた。

札幌で修業した僕は、ガンバでやれるだけの力がついたと思っていた。しかし、ガンバから声はかからなかった。そんな時に声をかけてくれたのが、地元のヴィッセル神戸だった。神戸は本当に自分を愛してくれた。在籍した4年間は本当に幸せだった。

そして06年のシーズン前、ガンバから声がかかった。本当に悩んだ。とても苦しかった。でも、自分の気持ちにうそはつけなかった。自分の心に正直な答えを出した。

今までしてきたいろんな決断は、すべて自分1人で決めてきた。どんな結果になろうとも、自分で出した答えなので納得がいくからだ。昨年1年間、ガンバでプレーして痛感したのは、チームのレベルが本当に高いこと。絶対にレギュラーと決まった選手はおらず、全員の競争意識の高さは半端ではない。そんな環境の中でサッカーをやれている幸せを、毎日感じている。

開幕以降、チームの状態はいい。その結果を支えているのは日々の競争意識だと思う。シュート1本。ダッシュ1本。誰も手を抜かない、抜けない。そんな空気が今のガンバにはある。昨年は無冠に終わったけど、今年はタイトルをすべて取りたい。

10年前、僕はガンバにチャンスをもらった。今度は僕がガンバのタイトルのために働く番だ。

毎日新聞夕刊「サッカーマインド」連載
今度はガンバのために=播戸竜二
2007年04月06日