Column

ゴールだけ見ていたい

サッカーを始めてからずっとフォワード(FW)で、他のポジションをしたことがない。中学生のころに一度、ミッドフィールダー(MF)を勧められたことがあるけど、1日やってすぐ断った。MFは合わない。ゴールだけを見ていたいし、ゴールだけを決めたい。これは昔から変わらない。生まれた時からそうだったのかもしれない。MFは華麗で、ボールをたくさん触って楽しそうに見える。でも、最後の最後にボールに触ってゴールを決める。俺(おれ)はこれで十分だ。

日本代表に呼ばれて、「ポリバレント」と呼ばれる複数のポジションをこなす役割を与えられた。「日本代表に残るためには大事。いろんなポジションができたほうが幅が広がる」。質問にはそう答えてきた。でも何か引っかかるし、面白くない。少し考えたが、答えは簡単。俺はそんなに器用ではない。周りはいろいろ言うけど、播戸竜二は変わらない。今までFWとしてやってきたし、これからも変わらない。ポジションや呼ばれ方は変わるかもしれないけど、俺の中心は変わらない。ずっとFWのままだ。

そのFW。求められるのはゴール。求めるのもゴール。そうやって今まで生きてきた。点を決めれば天国で、決めなければ地獄。0か100か。わかりやすくていい。

自分は点が取れなくても、チームが勝っているからいい。そうは思わない。チームが勝って自分も点を決める。これが理想。欲張りだけど、これがFWのメンタルだ。点を決められない時には、悩むことや考えることはある。でも、それもゴールを決めるためには大事なこと。人生は楽をしていては何もつかめない。そういうつらい、苦しい時間があるから、ゴールを決めた時の喜びは格別だ。27年間生きてきたけど、ゴール以上の喜びを感じたことがない。これからもそれを求めて走って行きたい。

毎日新聞夕刊「サッカーマインド」連載
ゴールだけ見ていたい=播戸竜二
2007年07月06日