Column

離脱の悔しさを力に

アジアカップの代表に選出されたにもかかわらず、合宿での練習試合でけがをしてしまった。その日のうちに検査をし、日本代表からの離脱が決まった。

オシム監督とも直接話をしたが、この人の力になれないと思うと本当に悔しかった。当然のことながらその日はぐっすり眠ることができなかった。

次の日、みんなにあいさつをした。みんなはこれから戦う身。自分は離脱する身。どんな言葉をかければいいのか? 少し悩んだけど、自分らしく楽しく言葉をかけようと思った。結果、自分でも満足できるスピーチができた。

でも、悔しさ、悲しさ、寂しさは消えなかった。2、3日はへこんだけど、実家でゆっくりして気持ちを切り替えた。こんな時は何もせず、のんびりする。そうするうちに自然とやる気になって力がわいてくる。それからは7月14日のナビスコ杯浦和戦に照準を合わせた。それと同時にアジアカップの日本代表の応援もした。

浦和戦で復帰し、ゴールを決め、チームは勝利した。負傷した個所の痛みはなかったけど、精神的には怖かった。再度、同じけがを繰り返さないか。筋肉系の負傷はいつもその恐怖心との闘いだ。でも、今回はその闘いにも勝てた。アジアカップでは闘えなかったけど、それ以上のものをつかめたような気がする。

けがをしたときはいつもそう思う。前の自分より成長して復帰しようと。今回、日本代表は優勝できなかったけど、いろいろなものを得たと思う。約1カ月間、みんなには本当にお疲れ様と言いたい。

そして、優勝国イラクもいろんな問題のある中、本当に素晴らしい。イラクにいる友人に連絡したらすごく喜んでくれた。19歳以下のアジアユースで知り合った選手で、友情は今も続いている。いつの日かどこかの大会で彼と再び試合がしたいと願っている。平和を願うとともに。

毎日新聞夕刊「サッカーマインド」連載
離脱の悔しさを力に=播戸竜二
2007年08月03日