Column

重い期待を背負って

ワールドカップ(W杯)予選。それを初めて経験した。昔からW杯に憧れてた。初めてしっかり見たのは94年アメリカW杯。あの時、衝撃を受けたロベルト・バッジオとロマーリオは今も俺のヒーローだ。でも、その前年に見たW杯予選はそれ以上の衝撃を受けた。「ドーハの悲劇」だ。

予選全部を覚えているわけでもないが、たった何シーンかのハイライトが鮮明に目に焼き付いている。最後、イラクに入れられたショートコーナー。カズさんのスライディング……。あれがサッカー、あれがW杯予選。あれから15年後、自分が同じ舞台に立てるとは想像もしてなかった。

1月15日、アジア3次予選タイ戦。この日のために異例の1月5日から自主トレをやり、自分を限界まで追い込んだ。メンバーに入るのは18人。毎日必死になってやらないと入れないというのはわかっていた。いろいろな思いがあって、あの日を迎えた。今までの親善試合とはまったく違う雰囲気。声援。

自分が今までにないぐらい興奮してるのがわかった。国を代表して闘うということ。国民の期待を背負って闘うということ。それはとても重いものだった。監督に呼ばれた時は、「やってやる。今まで自分がやってきたことをすべてぶつけてやる」という気持ちだった。時間は10分弱。求められるのはゴール!惜しいチャンスもあったけど決められなかった。自分の力不足を痛感した。それでも、こんな中で闘える自分は幸せだと思ったし、次も絶対に経験したいと思った。タイ戦は勝利できたが、これからも大変な試合が続く。そこで自分がゴールできるように、チームのために闘えるように、もっとレベルアップしないといけない。まだまだ続くW杯予選。最後にみんなで笑えるように、みんなで闘いたい。

毎日新聞夕刊「サッカーマインド」連載
重い期待を背負って=播戸竜二
2008年2月15日