Column

入院経験、生かしたい

久々の復帰となった。ただ、復帰といってもまだ試合には出られない。6月6日、右足のけがの検査結果を聞くために病院に行った。そこでふと思いたち、血液検査をしてもらった。その夜、ドクターから電話がかかってきて、肝臓の数値が高いことを聞かされた。

それを聞いた僕は、チームメートの遠藤のことを思い出した。彼も2年前に数値が高くなり、復帰に2カ月かかった。僕は病気などしたこともなく、肝臓がどういう臓器なのかも知りもしなかった。頭が真っ白になった。

次の日から自宅療養になった。ドクターには「この数値なら体がだるかったり、しんどかったり、何かしらの症状があるはずだけど?」と聞かれたが、僕たちの職業は常に疲労感があり、それが普通になっているから、自覚症状はなかった。

最初の検査から2週間後、なかなか数値が下がらず、入院することになった。入院といっても体を休めるのが一番の目的で、ひたすらゆっくりすることが仕事だ。今まで体を動かしてばかりいた僕にとっては、これが一番の苦痛だった。

そんな中、僕のブログを見て励ましてくれたり、自分の経験を伝えてくれたりする人がたくさんいて、励まされた。病院のベッドの上でそれを見るのはすごい楽しみだった。入院生活は3週間になったが、たくさんの人がお見舞いに来てくれてすごくうれしかった。

心配をかけたすべての人に恩返しをするために、何がいいのかと考えたが、やっぱり僕がグラウンドに立って、ゴールを決めるのが一番だと思っている。

僕はまた新たに歩き始めた。体は今までで一番弱っているけど、ここから一歩一歩、進んでいきたい。こんな経験はなかなかできないと思うし、それを無駄にしないよう、毎日を大事にサッカーをやっていきたい。

毎日新聞夕刊「サッカーマインド」連載
入院経験、生かしたい=播戸竜二
2008年7月25日