Column

プレーできる喜び

復帰。やっと復帰できた。6月に肝機能障害が分かってから3カ月、ようやく僕はピッチに戻った。

練習に久しぶりに参加した感動は一生忘れないだろう。同時に、体が思い通りに動かない不便さも体験した。今までの人生の中で、こんなに体を動かさなかったことはなかった。でも、だんだん体が出来上がっていく楽しさも感じた。

今、ガンバは過密スケジュールの中、戦っている。先日はアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)のため、アジアの西端、シリアまで行ってきた。片道17時間の移動は本当に過酷だった。そして、帰ってきてすぐ試合と、その後も過密日程続き。でも、僕は毎日楽しくてしようがない。

1カ月も何もせず、病院のベッドで横になっていたことを思うと、こんなにたくさんサッカーができるなんて本当に幸せだ。しかも、普通の生活をしていたら絶対行けないような国に行ける。シリアはアジアだけど、すぐ隣がトルコなので、ヨーロッパの雰囲気も漂っていた。初めて行った中東だったが、満喫できた。

トランジットで立ち寄ったドバイは夜中の12時でもすごく蒸し暑く、サッカーをするのは本当に大変だろうなと思わされた。このようにさまざまな国のクラブチームとやれるACLは素晴らしい大会だと思う。ガンバは、チームみんなの力でシリアのクラブに2勝し、アジアの4強に入った。優勝すれば世界につながっている。あのマンチェスター・ユナイテッドと試合ができるかもしれない。しかも、世界一の称号をかけて。

今回のシリア遠征でもサッカーの偉大さを感じた。街で出会うシリア人には「大阪? ガンバ?」と声をかけられたし、試合の翌日は「昨日出ていた人?」と聞いてくる。サッカーに国境はないと実感した。移動や日程は過酷だけど、それを補って余りある楽しみや経験がそこにはある。さあ、世界一に向かおう!

毎日新聞夕刊「サッカーマインド」連載
プレーできる喜び=播戸竜二
2008年9月26日