Interview
BAN×NOMURA対談

試合前の葛藤
--試合前の準備として、何か特別なことをしていますか。

野村「試合の時は2、3キロ落とさなあかんし、減量でキツい部分はあるけど、普段は食事を制限しているわけでもない。外食では好きなもん食べているし、普通に遊んでいる。これをしたらダメとか、考えすぎたり、悲壮感漂わせている人っておるでしょ。そういうのは大事な試合では勝てない。スパッと切り替えれる選手が勝てんねん。だから、俺も試合の2週間前になっても、これをしないといけないっていうのはない。いつも通りやって、徐々に練習量を落としていく。直前になると自然と気持ちが盛り上がってくるし、緊張してくる。けど、やっぱり試合前は恐いし、負けることしか考えられない。いいイメ-ジを頭に描いたりするけど、行きつく先はやっぱり恐怖感やね。その気持ちは絶対に抜けない。だから、最近は試合前はこんなもんだって思うようにしているし、そのまま試合当日を迎える。で、畳の上に上がると気持ちがスパッと変わる」

播戸「僕も試合前日とか、点取れなかったらどうしようと考えるけど結局、あんまり考えずに寝てしまう(笑)」

野村「そういうヤツが羨ましい(笑)。俺は試合前とか2、3時間しか寝れへん。5時半には起きて計量とかせなあかんからね。これがサッカ-の試合のように毎週あったらキツいけど、俺らは年数回しか試合がないし、自分一人でやらないといけない。柔道は畳の上に上がるのは自分だけやし、そこはごまかしが効かないんでね。でも、勝ったらスタ-なんで(笑)」

播戸「俺らも点を決めたらスタ-っていうのはあるけど、それだけじゃないからなぁ。周囲のみんなの助けがあるから」

--恐い、逃げ出したい気持ちは、畳の上に上がるまでに抜け出せるものですか。

野村「どっかで抜け出さないといけない。不安を引きずったままだと負けているんで」

播戸「練習量とかが自信になって、畳に上がる瞬間に気持ちが切り替わるとか」

野村「まぁ練習でやってきたことが一番やと思うけど……、う-ん、俺の場合、試合会場に行ってアップするやろ。その時、対戦相手の顔とか動きとかってすごく気になるわけ。それを見た後、試合直前になってトイレに行って顔を洗って、鏡の中の自分の顔を見る。自分が今日までやってきたことを思い出して、顔を見てヨシッと思って畳に上がんねん。その時、ヨシッと熱いものを感じた時にはいい試合ができるし、いい結果が残せる」

播戸「それ、分かる。今日、点取れるっていうのは確かにあるよ。逆に取れへんという時もあって、そういう時は何をやってもうまくいけへん。どうしよって思うもん」

野村「俺らは、悪い時も悪い時なりにやらないといけない。サッカ-のように試合が毎週あるわけじゃない。1年間の試合は限られているし、その日のために長い期間頑張っているからね。調子悪いから負けてもしゃ-ないじゃ通用しない。悪いなりにその状態で勝たないと。それがほんまの力なんだと思うけど、自分には、まだその力がない」

播戸「いい時は、なんでもできるから悪い時にどうするか。野村さんの悪いなりに何とかする気持ちは、すごく大事やと思う」


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